サビをキャッチーに作曲するには。
リズムパターンの罠。
よくサビをキャッチーに作曲できない…と言う人がいます。その場合、リズムパターンを意識していないことが多いです。
リズムパターンがワンパターンなので、起伏がなくて、なんとなくダラダラ続いてしまう曲、かなり退屈ですよね。
しっかりとリズムパターンの多彩さを曲に投入していくことです。
細かく刻んだり、ゆったりと緩めたり。
メロディーに気を取られがちな作曲ですが、リズムにもしっかりと意識を向けることです。
・全編通して、無意識に同じリズムパターンになっていないか
・サビなのに、地味なリズムパターンになっていないか
・サビの前段階で派手なリズムパターンを持ってきていないか
一般的な聴感上の感覚では、白玉音符(二分音符、全音符)は地味
付点音符(付点八分音符、付点四分音符)は派手ということは言えると思います。
あと、サビだけ聴いたら結構いい感じなのに、
全体を通して聴くとサビが「立たない」場合。
これもリズムパターンの単調さが原因の場合が多いです。Aメロ・Bメロ・サビと全編通して同じリズムパターンであれば、一般的にサビは立ちにくいです。展開が予想できてしまいますからね。それでも立たせることが出来たら、それはメロディーの運び方が上手い場合です。作曲難易度は比較的高めですが、歌の一番高い音程(Top)やファルセットの配置にセンスが求められます。
あらかじめ聴き手に学習させてしまう
それから、サビを立たせるために前段階(イントロやAメロなど)で、あらかじめサビの雰囲気を匂わせておく方法もあります。前もってサビを聴き手に無意識下で学習させてしまうんです。
あらかじめサビの空気感を学習してもらっているので、実際にサビがやってきた時に「期待通りの良い曲だ」と思わせることが出来ます。「サビでこう来たら良いよなあ」と、すでに前段階で思わせるように仕向けてしまうわけです。確信犯です。
その匂わせるひとつの方法として、サビのリズムパターンを前段階で意図的に取り入れるんですね。
サビを「予想できてしまう」のと、「予感させる」のは大きな違いで、前者はサビのリズムパターンが前段階でダダ漏れになってしまっている、後者はサビのリズムパターンに近くても、コードや音程の動きが全然違うアプローチになっている、ということです。
「予感させる」という布石を打つことで、サビを「期待通り」に感じさせるわけです。
退屈な曲でもアレンジの力を借りれば様変わりすることはあります。退屈なリズムパターンを華やかに装飾することで、楽しく聴かせてしまうわけです。これは編曲の領域なので、純粋な作曲からは外れてしまいますが、このように作曲と編曲を表裏一体に溶け合わせてしまうという考え方もあります。
コード進行の影響。
サビがキャッチーに聴こえない理由に「コード進行」の影響があるということもあります。
いわゆる「おいしいコード進行」はサビまでとっておけ、です。
インスト曲でも同じことです。メインテーマのセクションより強いコード進行は他のセクションではあえて使わないのです。
作曲の初心者~中級者くらいの方がやってしまいがちなのは、サビやメインテーマの強いコード進行のパワーに、AメロやBメロといった他のセクションが引きずられてしまうことです。
引きずられてしまっているので、全編なんとなくテンションが似通ってしまう。楽器を弾く人ならわかると思うんですが、弾く時の「手癖」というのも厄介です。
特にコードを弾く手癖は曲全編に影響を及ぼしますので、曲を単調化させてしまう要素は意識して排除していく必要があります。
そして、これは洋楽(特にバラード曲)のセオリーですが、Aメロなど平歌部分はオンコードを多用したりして徹底的に難しい響きにしたりします。難しい響きなので、取っつきにくいんですが、聴いた感じカッコいい。カッコいいけど、覚えにくい曲だよなあなんて思っているところに、サビで急に王道で直球のコード進行を仕掛けて、キャッチー感を放り込んでくる。
難しい曲だなあと思っているところに、王道のド本命の親しみやすさ。この緩急でキャッチー感を意図的に作り出してしまうんですね。
でもこの方法は、作曲の初心者、中級者である場合は絶対にやめた方がいいです。知識を新しく仕入れたばかりの頃は、とにかくやってみたくて、難しいコード進行で「どうだ、俺すげえだろ」と悦に入ることがあると思いますが、大体の場合、すげえと思ってるのは自分だけで大失敗します。
いきなり難しいことを取り入れようとせずに、ひとつひとつ着実に作曲をモノにしていくことが肝要です。
むしろ簡単なものほど逆に奥が深いよなーと思えるようになるまで、知識のひけらかしは遠回りになってしまうので注意が必要かもしれないです。余計な知識のせいでドツボにハマってしまって、曲が作れなくなってしまったなんていう人もいるくらいです。頭だけで曲を作るようになってしまったんでしょうね。音楽には魔物が住んでいるんです。
知識はあわてて身につけようとしなければ、後々強力な武器になってくれます。
ひとつひとつ着実に!
音楽は、感性と理性の両輪で動いていくのです。
邦楽ではオンコードの難解さや面白さは現在はあまり好まれない感じですが、かつてはユーミンやMISIAなど洋楽を邦楽に変換したような音楽には結構見られましたね。
現在はオンコードは味付けくらいの曲が多いかもしれないです。日本人は漂うようなオンコードの浮遊感よりも、ハッキリとメリハリの効いた展開を好む人が多いので、ストレートなコード進行を曲に散りばめていく方法がベターかなと思います。
コード進行の強さを★の数で例えると
Aメロ ★★★
Bメロ ★★
サビ ★★★★★
このような配分で各セクションのコード進行を配置していくのが良いと思います。
サビで最もエネルギーの強いコード進行を持ってくるのです。
コード進行の力を存分に借りて、サビを立たせる方法です。
メロディーでサビを立たせる。
作曲の大基本、メロディーでサビを立たせる方法です。
サビの頭に最も高い音程を持ってくる。
一番ストレートな方法です。元気のいい明るいポップス曲などに有効です。
頭に高いエネルギーがいきなり来ますので、尻すぼみになる危険はあります。それを回避する方法として、
日本人は繰り返しが大好きだ。
この法則を生かせないか考えます。歌詞表記になりますが、
「ずーっと ずーっと」とか「会いたくて 会いたくて」みたいに、同じフレーズを2回、または3回繰り返すメロディーです。(ただし、洋楽ナイズされた曲でやると高確率でダサくなります。要注意!)
音程の高さよりもフレーズを繰り返すことのイメージが強く残るので、メロディーのエネルギーが下へ下がっていくことから聴き手の意識を遠ざけることが出来ます。次の繰り返しの方に意識が向かうからです。
「また繰り返すぞ」という意識です。
でも繰り返さない(笑)ファルセットに跳ぶ、という意外性を狙う他の方法もありますが、ここではサビの頭に最も高い音程を持ってくるパターンが例なので、
やっぱり聴き手の期待通り「繰り返す」。繰り返すけどメロディーの動き方が違う、コードが違うなど、そこは作曲者のセンスによってアプローチは様々です。
変化をつけようとして、色々やりすぎて失敗する例も多いですので、失敗するくらいなら、直球で繰り返した方が良いです。
曲作りは同じ所を何度も聴くことになると思いますが、聴く人は同じ所を何度も聴かないので、最初のインスピレーションが大切です。わからなくなったら、頭や耳を冷やすために、Aメロあたりから聴き直してみるのも良いと思います。
そして、一番最後のキメ部分で、さらにもう一度クドくても「繰り返す」。
聴いた人は言うでしょう。
「覚えやすい曲だね ! 」と。
これが繰り返しの法則です。
ファルセットを使え。
ファルセット(裏声)をサビメロのピークに持ってくる方法です。
特に日本人は裏声が大好きです。
切なくも力強い桜が大好きなように。
いつ跳ぶか。どれだけ跳ばすか。
これは作曲者のセンスによるところが大きいですが、
効果的な跳ばし方というのはあります。それは…
タメて、跳べ
ということです。
一旦低い音程にあえて行って、その直後に一気に高い裏声で跳躍させる。
聴き手は思いの外、高い音程に跳んで来たので「わぁ、いい曲だなあこれ」と感じてもらいやすいです。
音程ではなくて、間を空けて跳ぶというのも良いと思います。タイミング的にタメて跳ばすわけです。
あとは、
5度で跳べ
これは他のページでも説明させて頂きましたが、
5度で跳べ!
5度の跳躍は良い曲が生まれる確率を相当高めます。
それから、ファルセットは
拍で跳べ
というテクニックもあります。
拍の「1,2,3,4」のどれかのタイミングで跳ばすんです。
小節頭の1拍目、2拍目、3拍目、4拍目
このどれかです。
拍の強さと相まって「跳んでる感」が増幅されます。
裏拍で跳ばすのも勿論アリですが、少し高級感のある感じというか、ボーカリストのテクニカルな歌唱力を引き出すようなフレーズに良いかもしれないですね。
表拍、裏拍のファルセットで緩急織り交ぜてたたみ掛けられれば、もうすでに音楽を仕事にされている方かも。
トップをねらえ!
Topとは歌の一番高い音程のことです。
このTopをどこに持ってくるかで、サビがキャッチーになるかならないかの
運命を左右します。
その運命を狙い撃ちにします。
邦楽でも洋楽でもいろんな曲を聴いてみて、いいサビだなあと思う曲があったら、分析の耳でどの部分が一番良いか具体的に考えてみてください。
まずほとんどの場合、歌が一番高い音程に行く所だと思います。それくらい、このTopの役割というのは非常に重要です。
どこに持ってくるのが効果的なのか。いくつか例を挙げると
・コード進行の力が最も強くなる瞬間
・小節のド頭
・表拍に乗る時
・スネアと同じタイミング
・コードチェンジの瞬間
・アウフタクト
・シンコペーション
など、いろいろと考えられます。
どこにTopを持ってくるのか。
これは作曲センスが大きく関わってくるポイントです。
是非、Topを狙い撃ちにしてみてください。
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