休符を使いこなす。
作曲と休符について
音符が出てくるだけでため息が出てきてしまうかもしれませんが、実は音符よりも大事なのが休符です。
いわゆる「タメ」です。
音符も休符も慣れてしまえばたいしたことはありません。仲良くなるというのは、慣れるということでもあるのです。
音楽が好きであれば大丈夫です。すぐ仲良くなれます。
4分音符分のタメを作るのが4分休符。
8分音符分のタメを作るのが8分休符。
16分音符分のタメを作るのが16分休符。
このタメの作り方でメロディーや曲調というものはガラリと変わります。…と言うより、休符を意図的に使うことで曲のあり方をコントロールすることが出来るのです。
作曲の初心者がやってしまいがちなのが、AメロもBメロもサビも、歌メロをリズムの「頭」から始めてしまうことです。
もちろん「頭」から始めることで生まれる心地よさや勢いは大切です。
しかし、曲全体を通して見てみたらどうでしょうか。どの箇所も入りが同じタイミングで変化に乏しい曲になっていませんか?
そこで休符の登場です。
Aメロは半拍(8分休符)タメてみよう。
Bメロは1拍(4分休符)置いてみよう。
サビは頭から勢いよく!
キメ部分で1拍半タメる!
というように、メロディーのリズムワークに変化が生まれます。
一般のリスナーの方は音符や休符を意識して音楽を聴いてなんかいません。そんなのいちいち意識していたら音楽を聴くのが疲れちゃいますよね。
でも音楽を作る人たちは音符や休符と仲良くならなければいけません。音楽に接するときはいつも意識していなければ、良い曲なんてとても作れないでしょう。
音楽のスキルを上げていくうちに、聴くジャンルや曲がより難解な方向に行くのは、音符や休符の難しいジャンルに興味がわいてくるからなんです。
親しみやすいポップスからハウスやソウルに流れたり、ノリノリのEDMからもっと難解なエレクトロニカやミニマルテクノに傾倒するのは、より複雑なリズムアプローチを欲するからなんですね。
休符を確信犯的に投入する。
プロのクリエイターたちは、意識的に音符や休符の配置を曲の中で巧みに変えて曲を作ります。それもなんとなくではありません。確信犯的にです。
どう驚かそうか、
どう感動させようか、
どう泣かせようか、
そのために考えるべきことは、音符や休符の配置です。
CHICAGO - Hard To Say I'm Sorry
この名曲はまさにこの休符を巧みに用いた楽曲です。半拍置いたり1拍置いたり、休符が生み出す「タメ」を感動に変えている名曲です。
名曲は80年代にあり。
よく聞く言葉ですが、邦楽にもありました。休符を巧みに用いた名曲が。
工藤静香 - 恋一夜
サビ部分で2拍タメたり、随所で半拍置いたり、メロディーラインと休符との駆け引きが実に巧妙に仕掛けられています。
2000年代以降、現在に至るまで、音符や休符といった原始的なことよりも、特にサウンドアプローチやエンジニアリングに重きが置かれることが多くなりましたが、
テクノロジーの進化がまだ到来していない時代の音楽にこそ、作曲の妙というものがたくさん詰まっているのです。
Mariah Carey(マライア・キャリー) - HERO
これも珠玉の名曲ですよね。サビ部分の歌の入りが16分裏という休符を使いつつ、美しいメロディーラインに仕上げられた名曲です。
ダンスミュージックでも、もちろん休符の威力は絶大です。
Justice - Genesis
エレクトロ・デュオ Justiceの名曲。強烈に音圧を高めた2拍4拍のスネアの合間を、16分裏や8分裏を シーケンスやサンプルが攻めていくトラックですが、絶妙な休符が高度なグルーヴを生み出しています。
シンガーソングライターも、アレンジャーや作曲家も、バンドマンも、DJやリミキサーも、この「休符」を巧みに操れるかが、楽曲のクオリティに密接に関わっているのです。
休符は人に感動を与える魔法なのです。
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