大人の
サブドミナントマイナー
サブドミナントマイナーとは
4度つまりFをFmにしてしまうワザです。
Fm7でも構いません。
むしろ都会的な響きのFm7の方が好まれます。
サブドミナントのFの本来の機能性やキャラクターとしては、
「広がりを感じさせる」または「これから何かが始まる期待感」だったり、
トニックのCから始まるような王道すぎる響きを回避するために使ったりなど、
比較的現代風な方向性を演出するために用いられますが、
そのFをFmにしてしまいます。
すると、どうなるか。
なんとなく懐かしい響きになります。
古いとか新しいみたいに年代別に感じるような懐かしさということではなくて、
聴き手にノスタルジックな感情をもたらすといいますか、
ある種の胎内回帰的な懐かしさです。
子供の頃を思い出すような、懐かしくて涙が出てしまうような
そんな感情を作り出してくれるのが、このサブドミナントマイナーなのです。
実際に60年代70年代頃のポップスやロックに多用されていたので、
年代によっては単純に懐かしい曲だなあと感じる方もいるかもしれません。
このコードは邦楽よりもビートルズを初めとした洋楽で非常に好まれてきました。
それゆえに使い方を間違えてしまうと、
ただの古くさい曲になる危険性もはらんでいます。
洋楽で好まれる理由は、外国人はメリハリがハッキリした曲よりも、
雰囲気が良くて言葉では何とも言い表せない響きを好むことが多いからです。
最先端のR&Bなどでも、効果的にサブドミナントマイナーを配置して、
「いい雰囲気」を醸し出させている曲がたくさんあります。
反面、日本人は比較的メリハリの効いたワビサビのハッキリした起承転結を好みます。
サブドミナントマイナーのような「雰囲気モノ」よりは、
カノン進行やJ-POP進行のようなド直球な進行感を好むことが多いです。
日本人的に解析するなら、このサブドミナントマイナーのコード感は
昔で言う「B面っぽい」「アルバム曲っぽい」そんな香りのする音です。
悪く言ってしまえばそうなのですが、
言い方を変えれば、「玄人っぽい」「大人っぽい」ということです。
強いコード進行のように聴き手にハッとさせるキャッチーな効果というよりは、
いつもと違う響きを感じさせる変化球といったところでしょうか。
直球ばっかり投げていてはいつか打たれてしまいます。(飽きられてしまいます)
変化球ばっかり投げていてもいつか打たれてしまいます。
直球を投げ込んでいく中で不意に変化球を織り交ぜていくことで、
聴き手にバットを振らせてしまおうということなんですよね。
サブドミナントマイナーFはドミナントGに行きたがります。
トニックCにも行きたがります。
FからFmに行って、Cで終わらせるのもいいでしょう。
使われる場所としては、やはり曲の区切りになるところや、
メロディーの終わりにかけてが多いと思います。
もしくは随所に一瞬だけ香りを放つような使い方だと思います。
曲をどう終わらせようか…
曲にどう味付けしていこうか…
変化球を投げてみたくなったときは
サブドミナントマイナーを思い出してみてください。